高血圧症について
日本の高血圧患者数は4,000万人。30才以上の男性の47.5% 、女性の43.8%が高血圧症といわれています。本年、日本高血圧学会により「高血圧治療ガイドライン2009」が改訂されました。
1.高血圧症とは
高血圧症の患者の約90%は原因が不明で、本態性高血圧症とよばれます。
原因が分かっている場合には、二次性高血圧症とよばれます。高血圧症の患者の5-10%は腎疾患が原因で、1-2%は内分泌疾患によるものです。
心臓が収縮したときの値を「収縮期血圧」または「最高血圧」といい、心臓が拡張したときの値を「拡張期血圧」または「最低血圧」といいます(単位はmmHgです)。
収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上を「高血圧症」といいます。正常血圧は収縮期血圧130mmHg未満、かつ拡張期血圧85mmHg未満です。
自宅で自動血圧計を使って血圧を測定することは、高血圧症の診断や、薬の効果判定に非常に有用です。医者が診察するときだけ血圧が高く自宅での血圧が低い、白衣高血圧を見分けるためにも自宅での血圧測定は必要です。
家庭での血圧の測り方
- 測定部位は上腕を用いる。
- 朝:起床後1時間以内、排尿後、朝食前、薬を飲む前、イスに座って1-2分安静後に測定。
夜:就寝前、イスに座って1-2分安静後に測定。 - 複数回測る場合は、3回連続して測定して、近い2回を平均して求める。
- 平均の血圧が135/85mmHg以上ならば、高血圧症と考えられます。
2.高血圧症の治療
なぜ血圧を至適にコントロールしなければならないのでしょう。それは血圧が高いほど、心筋梗塞、心不全、脳卒中、腎臓病になる頻度が上がるからです。最近の臨床研究によると、高血圧症の治療によって、脳卒中35-40%、心筋梗塞20-25%、心不全50%以上の発症を抑えることができるとされています。収縮期血圧と拡張期血圧とともに、140/90mmHg未満に下げることで、心血管の合併症を減らすことができます。糖尿病や腎臓病を合併した高血圧では130/80mmHgが治療目標になります。また今年のガイドラインでは新たに家庭血圧の目標値が追加されました。
【血圧の目標値】
分類 | 診療室血圧 | 家庭血圧 |
若年者・中年者 | 130/85未満 | 125/80未満 |
高齢者 | 140/90未満 | 135/85未満 |
糖尿病患者 慢性腎臓病患者 心筋梗塞患者 |
130/80未満 | 125/75未満 |
脳血管障害患者 | 140/90未満 | 135/85未満 |
1) 生活習慣の改善
生活習慣の改善は、高血圧の発病を予防する上でも、また発病した高血圧患者の管理を行う上でも最も重要なものです。生活習慣の改善は、血圧を下げ、降圧剤の効果を増強し、心血管病のリスクを減少させます。
心血管病とは、心臓の血管が詰まっておきる狭心症や心筋梗塞などの病気のことです。心血管病の危険因子として高齢(65歳以上)、喫煙、高血圧症、脂質異常症、肥満(とくに腹部肥満)、メタボリックシンドローム、若年(50歳未満)発症の心血管病の家族歴、糖尿病があります。
危険因子が複数あるとさらに心血管病の発症のリスクが高くなります。
*生活習慣の適正化のために
- 食塩制限6g/日以下。
- 適正体重の維持
標準体重=(22×[身長(m)]×[身長(m)])。
適正体重はその20%増しまでが許容範囲です。 - アルコール制限:男性は日本酒約1合以下、女性はその半分がめやすです。
- コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控えましょう。
- 運動療法(有酸素運動)の推進。
- 禁煙
2)薬物治療
血圧を下げる薬(降圧薬)には、利尿薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体(ARB)拮抗薬、β遮断薬、α遮断薬の6種類があります。それぞれ異なった機序で血圧を低下させます。
降圧薬はこの6種類の中から、高血圧の程度、合併症、副作用などを考慮して最も適した薬を選択します。特に糖尿病(耐糖能障害を含む)、メタボリックシンドロームでは早期の薬物療法を開始するように推奨されています。また1剤だけで血圧の管理が不十分な場合は、6種類の中から病状に応じて2剤以上の薬剤を併用することが一般的です。
65歳以上の高齢者でも、治療の目標は、血圧を140/90mmHg未満にすることです。しかしながら、高齢者では脳や心臓の血管の血流が低下していることも多く、急激な血圧の是正には注意が必要です。
また高血圧症以外の危険因子も是正していくと、さらに心血管病のリスクは軽減できます。
3.まとめ
以上、高血圧症についての最近の知見をまとめてみました。日々の健康増進のためにも一人一人が日常生活で注意していくことが重要と思われます。
当院では皆様方の健康維持のお役にたてるよう努めて参りますのでお気軽にご相談下さい。
参考文献:高血圧治療ガイドライン2009 日本高血圧学会